大腸がんの治療

 大腸がんの治療には内視鏡的治療、外科治療(開腹手術、腹腔鏡手術)、化学療法、放射線治療、免疫療法などがあります。大腸がんの場合病巣を完全に切除できれば根治する可能性が高く、病巣の切除が治療の主体です。

内視鏡による治療
近年の内視鏡の技術と機器の進歩は目覚しく、高度な検査から実際の大腸がんの切除まで行なわれます。
●内視鏡的ポリープ切除
茎のあるポリープ(きのこのように上に向かって放射している形のもの)の場合スネアと呼ばれるループ状の針金ワイヤーを茎の根に引っ掛けて締め付け電流を流し焼ききって切除します。
●粘膜切除術
茎の部分がなくて、平坦なポリープや大腸がんの場合、ワイヤーが引っかかりにくいためガンの部分の下の層に生理食塩水を注入してガンを浮き上がらして比較的広い範囲で腫瘍部分を焼ききります。
●粘膜下層剥離術
大腸がんが大きい場合、今までは数回に分けて腫瘍を切除していましたが最近ではガンの粘膜下層を電気メスで徐々に剥ぎ取る方法で大きなガンも一括でひとつの塊として切除できるようになりました。しかし、手術自体は高度で患者に対する負担も大きいので数日間の入院が必要になります。

大腸がんの手術
大腸がんの手術は、がんの進行具合や、患者さんの負担や希望などを考慮して行なわれます。
●結腸がんの手術
大腸がんの治療は外科療法が基本で、早期がんの場合でも手術が必要になる場合があります。結腸がんの場合、切除する結腸の量が多くても、術後の機能障害はほとんどおこりません。リンパ節郭清(かくせい)と呼ばれるリンパ節の切除とともに結腸切除術が行われます。
●直腸がんの手術
直腸がんの手術にはガンの進行度によって様々な手術方法があります。その理由は直腸が骨盤内の深く狭いところに位置しその周辺には前立腺・膀胱・子宮・卵巣などの泌尿生殖器があります。もし直腸がんが進行性の場合どうしても排便、排尿、性機能などを犠牲にしなければならない場合があります。しかしなるべく日常生活に支障のないようにするために様々な手術方法が確立されています。しかし当然優先するべきは生命の維持であり完治であるためより確実な根治のために神経を犠牲にすることも重要ともいえます。
【自律神経温存術】
直腸がんの進行の度合と排尿機能および性機能を支配する自律神経繊維を正確に把握します。そのガンの進行度によってなるべく自律神経を温存する手術法です。日本における自律神経温存術はすばらしく、徹底してガンを切除しながらも進行度に応じて神経を残すことが可能です。男性では射精、勃起機能を完全に温存することができますし、根治を優先する場合勃起機能のみを残すことも可能です。
【肛門括約筋温存術】
自動吻合器という筒状の機械を使う手術で、がんの切除後に短くなった直腸端と結腸の先端を縫合し、本来の肛門からの排便を可能にする手術法です。これにより、以前は肛門に近い直腸がんの多くに人工肛門がつくられていましたが、最近では直腸がんの8割は人工肛門を避ける手術ができるようになりました。肛門から4cm以上、肛門と直腸との境界から2cm以上離れていれば、自然肛門を温存することができると言われています。また、この手術と自律神経温存術を併用すれば、術後の機能障害をかなり軽減することが可能となります。しかし、何が何でも肛門を残すことにこだわると特に高齢者の場合、頻便などのため逆効果になるケースもありますので、根治を前提にしながらも本人の希望や様々な可能性を残しつつ総合的に手術を決定することが重要となるでしょう。
【人工肛門】
肛門に近い直腸がんや肛門にできたがんでは、人工肛門にしなければなりません。また、高齢者は肛門括約筋の力が低下しており、無理して括約筋温存術を採用すれば術後の排便コントロールが難しい場合もあるので、多くの医師が人工肛門を勧めています。

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術 がんが盲腸、上行結腸やS状結腸、上部直腸に位置し、内視鏡的治療が困難な大きなポリープや早期がんが腹腔鏡手術のよい対象と考えられています。手術方法は、炭酸ガスで腹部を膨らませて、腹腔鏡を腹部の中に入れその画像を見ながら小さな孔から器具を入れて手術を行います。がんを摘出するために1ヶ所、4~8cmくらいの傷が必要です。手術時間は開腹手術より長めですが、小さな傷口で切除が可能ですので、術後の疼痛も少なく、術後7~8日前後で退院できるなど負担の少ない手術です。確かに、患者への負担の少ない方法ですが腹腔鏡手術は近年開発された手術手技であり、特殊な技術・トレーニングを必要とし、外科医のだれもが安全に施行できるわけではありません。腹腔鏡手術を希望の場合は十分に経験を積んだ大腸がんに対する腹腔鏡手術専門医による手術が必要です。
腹腔鏡手術

【大腸がんの手術後の腹部の膨満感について】
大腸がんの手術後には必ずといっていいほど排便の機能が安定せずにしばらくは機能障害が続きます。特に腹部の膨満感は様々な要因で起こります。開腹手術をするということは身体の中でも距離のある臓器を限りあるスペースに納めているので術後は活動復帰と同時に経路を確保するために腸が動きます。その際多少腸のストレスによって膨満感は起こります。そして大腸がん術後膨満感の最大の原因は腸壁同士の癒着です。がん細胞を取り除いた後残った腸を縫い合わせるわけですが、この縫い合わせた場所を食物が通過する際にうまく通らないために膨満感や嘔吐感・便秘を起こします。症状が重い場合は腸閉塞を起こします。通常これらの症状は時間とともに落ち着き安定してきますが、手術をした場所によっては下痢便や便意の日常化や頻便に襲われる場合もあります。総合的な大腸がんの手術後の経過観察は大事で、排便とガス等の状況を常に管理していくことが大事で容態が急変しても大事なように観察することが大事です。いくら原発巣の切除が成功しても術後の生活レベルが落ちると患者さんの不安・負担は計り知れないものがあるので直後の経過観察は大事になります。対策はまず基本的に暴飲暴食は絶対避けゆっくりと食事をする一回の食事の量を少なくする事です。また水分の量にも注意して段階的に量を増やすことが大事になります。時には栄養不足等も起こるので貧血や日常生活に支障をきたすような場合にすぐ対処できるように主治医医院との連携も大事になってきます。

大腸がんの化学療法
大腸がんの化学療法とは抗がん剤を用いて治療することを言います。大腸がんの化学療法には目的によって扱う抗がん剤や頻度、投与の仕方が異なってきます。 それは進行がんの手術後に再発予防を目的としたり、根治目的の手術が不可能な進行がんに対して延命のために用いたり、死にいたるまでの患者さんの生活の向上のために用いたりと様々な場面に対応するためです。
術後補助化学療法
ある程度進行したガンだと、切除できたとしてもリンパ節転移があった場合に、再発率が高くなります。そのような再発の可能性が高い場合はその予防のために化学療法を行ないます。また、再発までの期間をなるべく延ばすためにも用いることもあります。実際には手術時にリンパ節転移が確認された患者さんはこの術後補助化学療法を行ないます。
切除不能・再発進行がんに対する化学療法
大腸がんの進行が高度で手術による根治が困難な場合、手術後に再発した場合には化学療法を行ないます。大腸がんを抗がん剤だけで治療して完治することは難しいのですが、各臓器の代謝が比較的良好の場合、かなり延命治療に効果があります。

大腸がんと抗がん剤
大腸がんに対して有効かつ現時点で国内にて承認されている抗がん剤は、フルオロウラシル(5-FU)+ロイコボリン(国内ではアイソボリン)、イリノテカン(CPT-11)、オキサリプラチン、UFT/LV、UFT、S-1などです。
5-FU(5-フルオロウラシル)+ロイコボリン
5-FUは数十年前より広く使われている薬で、胃がんや食道がんにも用いられています。大腸がんに対しては、ロイコボリンという薬と併用されることが多いですが、最近はそれに加えて後述するイリノテカンやオキサリプラチンとも併用されるケースも多くなってきています。使い方は、週に1回点滴する方法や、2週間に1回持続点滴を行う方法、週に1回肝動脈へ点滴する方法など、いろいろな治療法に組み込まれて使用されています。副作用は比較的軽微ですが、下痢や口内炎などの粘膜障害や、白血球が減ったりすること、手指の皮膚が黒くなること、食欲の低下などに注意する必要があります。
イリノテカン
10年ほど前から用いられ、胃がんや肺がんでも広く使用されている薬です。大腸がんに対しては、単独あるいは、5-FU/ロイコボリンとの併用で用いられます。併用する場合には5-FUを短時間(15分)で投与する方法(IFL療法)と、5-FUを短時間で投与した上でさらに46時間持続的に投与する方法(FOLFIRI療法)の2種類あります。以前はIFL療法も多く用いられていましたが、副作用並びに効果の面でFOLFIRI療法のほうが優れていることがわかったため、現在ではFOLFIRI療法が多く用いられるようになってきています。副作用としては、食欲の低下、全身倦怠感、下痢、白血球が減ったりすること、脱毛などがあります。また投与中の発汗や腸管運動の亢進などもよくみられますが、アトロピンなどの抗コリン薬を用いるとコントロールできることが多いです。食欲の低下に対しては、ステロイド剤や制吐剤を用いますが、コントロールが難しい場合もあります。そのような場合には、担当医に相談しましょう。
オキサリプラチン
オキサリプラチンは日本で合成されましたが、主にフランスやアメリカなどで臨床開発が行われ、世界的には大腸がんに対する主な抗がん剤のひとつとなりました。単独ではあまり効果を発揮しませんが、5-FU/ロイコボリンとの併用(FOLFOX療法)では、FOLFIRI療法とほぼ同等の治療成績を示しており、この2つの療法が現在の大腸がん化学療法の柱となっています。副作用としてはイリノテカンと比較して食欲の低下は軽く、脱毛もあまり認めませんが、投与された患者さんの80~90%に感覚性の末梢神経障害をきたすのが特徴です。この末梢神経障害は、寒冷刺激により誘発され、冷たいものを触ったり、冷たい飲み物を飲んだりすることで、手先にビリツとする感覚や、のどの違和感が出現します。治療開始当初は2~3日で消失しますが、治療を継続するにしたがって、回復が遅れ、治療後4~5ヶ月で、10%の患者さんに機能障害(箸が持ちにくくなるなど)をきたすといわれています。このような場合には、オキサリプラチンの投与量の減量、あるいは治療をお休みするなどして副作用の回復を待ちます。これら以外にも白血球が減ったり、血小板が減ったりすることが比較的よくみられます。
大腸がんと分子標的製剤(工事中)

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