海外研修報告

海外研修

2013年10月に約2週間、テキサス州ダラス市にあるThe University of Texas Southwestern Medical CenterのSt. Paul’s Hospitalで主に手術を見学した。研修にあたり、大阪難病研究財団にご支援頂いた。本研修の目的は、手術支援ロボットの技術発達と運用が著しい米国におけるロボット手術の実際を視察することにあった。
St. Paul’s Hospitalには16室の手術室があり、消化器外科を始め、数多くの診療科の手術が行われていた。内分泌外科では上皮小体摘出術、消化器外科では腹壁瘢痕ヘルニア、食道癌、肥満患者に対する胃切除術、膵尾部切除術、腹腔鏡下結腸右半切除術、腹腔鏡下Heller筋層切開術等を見学した。開腹手術においては本邦での手技と大きな相違はなかったが、手術に用いる器械の充実ぶりには目を見張るものがあった。例えば血管処理についてであるが、本邦では糸あるいはクリップで結紮を行うところを大型の超音波凝固切開装置で切離したり、血管専用の自動縫合器を用いて切離したりしていた。また、大学病院ならではと考えられるが自動縫合器を惜しみなく用いて組織の切離を行い、手術時間の短縮と手技の簡便化を図っていた。このように積極的に器械を用いることによって、早い時期から手技を身に付けることができるものと考えられる。
本邦と米国との手術における大きな違いとしては、米国では鏡視下手術の技術革新が著しい点が挙げられる。本邦では現時点でまだ70台程度しか普及していない手術支援ロボット「da Vinci」を使用した手術が盛んであり、Southwestern Medical Centerでは年間約1,000例の手術を行っている。多くは泌尿器科の手術症例であるが、産婦人科、消化器外科の手術症例でも導入されていた。手術支援ロボットの開発は1960年代より始まり、da Vinci Surgical Systemは1999年に市販が開始された。海外におけるロボット手術の現状は、7割以上が前立腺全摘及び子宮全摘である。本邦での手術支援ロボットの消化器外科領域での使用は2009年に開始されたばかりであり、限られた施設のみで使用されている。
da Vinciを用いた手術は、高度の肥満で開腹手術に労を要する患者を主対象としている。食道アカラシアに対するHeller筋層切開術では患者は高度の肥満ではなかったが、適応が拡大されてきていると考えられる。 
ロボット手術の術者になるためにはトレーニングが不可欠である。St. Paul’s Hospitalではレジデントの時期からトレーニングを開始し、3ヶ月に亘り講義、実際の患者に対する手術見学、練習機(本物のda Vinci)を用いた手技練習、実験動物を用いたウェットラボ5例での修練を義務付けられる。
このように鏡視下手術に関心が高く、積極的に導入する理由としては、侵襲軽減、開腹手術の困難さ、整容性の重視が挙げられる。鏡視下手術による創の縮小は、創痛の軽減、創感染の低下、癒着の軽減に寄与しており、最終的に在院日数の短縮につながっている。本邦より肥満患者が多く、またその肥満度が著しい米国では開腹手術に労を要すると考えられ、小さな孔、切開創で行うことができる鏡視下手術が発展してきたのも不思議ではない。
最後になりましたが、ご支援頂いた大阪難病研究財団の籔本理事長、このような貴重な経験を積む機会を与えて下さった阪和住吉総合病院の金井先生、The University of Texas Southwestern Medical CenterのPresidentであるDr. Podolsky、外科主任部長であるDr. Regeに深く感謝致します。

阪和住吉総合病院 消化器センター
張村 貴紀

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