医療法人錦秀会 阪和記念病院

たこつぼ型心筋症について

たこつぼ型心筋症とは

1990年に本邦で初めて報告され、2004年に発生した新潟中越地震直後に発生が多く報告されています。

名前の由来:(下図参照)

冠動脈に有意狭窄がないにもかかわらず、特徴的な左室造影所見を示します。
左室造影検査では、収縮期に心基部のみよく過収縮(青矢印)するが心尖部は収縮しないため(黄色実線)、収縮末期の造影所見がたこつぼの様に見えることから名付けられました。

病態

詳細は未だ明らかになっていませんが、ストレスによる内因性カテコールアミンの増加などの関係が考えられています。また微小循環不全、多肢冠攣縮や酸化ストレスなどが一因ともいわれています。

患者背景

中高齢男性に多い急性冠症候群(ACS)とは異なり、高齢の閉経女性に多く発症します。
国内の250例中、男女比は1 : 7と圧倒的に女性優位です。
平均年齢 男性65.9±9.1歳、女性68.6±12.2歳 ⇒ 女性の方が約3年高齢です。

誘因

何らかの身体的・精神的ストレスが先行することが多く、自然災害時にはたこつぼ型心筋症の発症が増えることが報告されています。 2004年10月23日新潟中越地震では、地震の前後で比較し地震後に発症数に明らかに増加したことが報告されています。
(最大震度7、マグニチュード6.8、死者約60名、負傷者約4,800名)
【震源に近い8つの病院での調査】
地震前の4週間前では1症例のみ、地震後の4週間では25症例が発症しました。
⇒地震による精神的ストレスが発症と関係があることを裏付けています。
東北関東大震災3.11でも多く発症しています。

その他にも下記のような様々な誘因が報告されています。
強烈な精神的ストレス (30% 女性に多い)
身内の死、虐待、喧嘩、大病の診断など・・・
強烈な身体的ストレス、急性内科疾患 (40% 男性に多い)
感染、脳卒中、急性呼吸不全、急性腎障害、術後など・・・
明らかな誘因なし。30%

症状

突然の胸痛から始まり急性冠症候群(ACS)によく似た症状を呈します。

胸痛・胸部不快など 67%
心電図異常 20%
呼吸困難 7%
血圧低下・ショック 5%

診断

心電図における心筋虚血所見(初期の広範囲のST上昇とその後出現する巨大な陰性T波)および心臓超音波検査による特徴的な壁運動異常所見(心室基部の過収縮と心尖部広範囲におよぶ収縮低下)を手掛かりに急性冠症候群(ACS)との鑑別を行います。最終的には冠動脈造影と特徴的な左室造影所見で診断されます。

心臓超音波検査

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たこつぼ型心筋症 心機能 EF36% 正常心 心機能 EF67%
冠動脈造影

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左冠動脈造影検査 右冠動脈造影検査
左室造影

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左室造影検査

頻度と時間生理学的パターン

頻度は夏に多く秋に少ない :反対に急性冠症候群(ACS)では冬に多く夏に少ない。
1日のうちでは朝に多く夜の発症は少ないと報告されています。

治療

1.急性期管理

一般的には良好で自然に軽快・治癒することが多いですが、急性心不全・心原性ショック・心破裂・脳塞栓を形成する場合があるため入院を必要とします。決して軽視はできません。

急性心不全例
基本的にはカテコラミン製剤、血管拡張薬や利尿剤で対応します。
治療抵抗性の場合はIABP(大動脈内バルーンパンピング)やPCPS(経皮的心肺補助装置)などの補助循環装置を使用します。
心原性ショック 10~19%
強心薬(ドブタミン・ミルリノン・ジギタリス)やα1受容体作動薬フェニレフリンや補液などで対応します。
左室流出路狭窄 11-25%
β遮断薬 (メトプロロールやプロプラノールの静注、血圧を下げにくい短時間作用型のランジオロールの静注)で対応します。
不整脈
心室性不整脈 約5%
心房細動 約7%
房室ブロック 約4%
特にQT延長が顕著となる発症後約3日目は徐脈や低カリウム血症、QT延長を助長する薬剤の使用が心室性不整脈を惹起するので注意が必要です。
心室内血栓 約3.8%
心尖部の無収縮により心尖部に血流が停滞することから形成します。治療経過で心機能が回復すると同時に心室内で形成された血栓が遊離し脳塞栓を起こす可能性があり、ヘパリンやワーファリンなどの抗凝固療法が推奨されています。
心破裂 (非常に稀)
左室流出路狭窄の有無に関わらず、高齢女性・血圧・駆出率・左室内圧が高い症例に多いと報告されています。

2. 慢性期管理

再発は少なく、発症より1年以内でも3%以下と報告されています。それ以降はより頻度が低く比較的再発は稀です。再発例と非再発例には投薬例に差異はなく外来での慎重なフォローアップが必要です。長期予後は良好です。

予後

院内死亡は4.2%と少ない。
死因は発症の引き金となった基礎疾患による非心臓死が多い。
死亡例の81.4%が急性腎不全、呼吸不全、脳卒中、非心臓手術など。
重度の基礎疾患あり⇒死亡率12.2%
基礎疾患なし⇒死亡率1.1%
心臓死の多くは心原性ショックと全身塞栓症で、稀に心破裂が報告されています。

参考文献

H. Watanabe. et. al. Impact of earthquakes on Takotsubo cardiomyopathy. JAMA 294(3):305–307.

(文責 佐々木英之 2014年11月)